総合安全工学研究所は、1973(昭48)年8月3日、科学技術庁所管の財団法人として設立され、その後文部科学省の所管になり、2012年4月1日には公益財団法人となりました。設立に際しては当時の木川田隆一東京電力株式会社会長のご支持を得て、更に平岩外四、那須翔ほか歴代東京電力株式会社社長の物心両面の温かいご支援を頂いてきました。歴代理事長は以下のとおりです。
初代 | 黒川眞武 | 科学技術会議議員 | 1973〜1982(昭48〜昭57) |
第2代 | 疋田 強 | 東京大学名誉教授 | 1982〜1989(昭57〜平元) |
第3代 | 永野 治 | 石川島播磨重工業(株)顧問 | 1989〜1993(平元〜平5) |
第4代 | 井上 孝 | 東京大学名誉教授 | 1993〜2001(平5〜平13) |
第5代 | 那須 翔 | 東京電力(株)相談役 | 2001〜2004(平13〜平16) |
第6代 | 都築正和 | 東京大学名誉教授 | 2004〜2013(平16〜平25) |
第7代 | 田村昌三 | 東京大学名誉教授 | 2013〜現在 (平25〜) |
当研究所の目的は、現代社会の重要課題である安全な社会の建設に資するため、総合安全工学に関する科学知識の普及啓発調査及び実験室の利用など自然科学、人文科学を網羅した幅広い視野に立って安全な社会を創ることであります。ここにいう総合安全工学とは、安全に関する多領域分野にわたる科学技術を総合的に駆使した学問であり、その対象には、社会の安全の観点から自然災害、環境問題、セキュリティなども含んでいます。
当財団の機関誌SE の創刊号は1974 年4 月1 日に発行され、2020 年 9 月には200 号となりました。A4版、全ページカラーで、絵や 写真、図表を多く取り入れ、総合安全工学の専門家がわかりやすく解説した雑誌です。
機関誌SE 総合の中からテーマ別に選んだ原稿をもとに安全工学に関するSE シリーズを出版しています。
各界著名人、学識経験者を招き、総合安全工学に関する懇話会を開催し、講演、話題の提供、参加者との交流の場としています。2022年には300回になります。
会員の知識・情報に関する意見交換、相互研修のため「化学安全セミナー」「プロセス安全セミナー」「テロ対策セミナー」を開催しています。
総合安全工学に関する調査研究の相談に応じ、必要により当財団委託の専門分野の権威者からなるプロジェクトチームを編成し、調査研究を行っています。 官庁、各種研究機構及び多くの企業から調査研究委託を受け、多くの成果をあげています。 最近の委託研究の実施例を以下に紹介します。
多くの企業より委託調査の研究を依頼され、トラブル・事故原因究明、再発防止、安全対策についての調査・相談を受けています。
次世代エネルギー水素についてその取り扱いのリスクアセスメント、水素ステーションの安全、トラブル分析、次世代の技術開発のテーマの提案など実施しています。
空港などにおける爆発物探知装置について性能検査や相互比較、メンテナンスを含めたスループットなど各種評価を行っています。 関連した爆発物、爆発実験、装置の検査方法などの教育ビデオの作製支援も行っています。
鉄道、大規模イベントその他大勢の人が集まる場所における爆発物テロ対策などのセキュリティについて、分析、脅威の抽出、対策などについて提案を行っています。
当財団独自の実験室と専任の職員により各種測定装置を用いた化学安全性に関する評価試験を行っています。現在、実験室は埼玉県川越市の日油技研工業株式会社内にあり、実験室開設以来、多数の企業等の委託を受けています。
最近では、特殊な用途の物質や、物性が試験温度付近で変化するような化合物についての試験も依頼され、測定法に注意しつつ受託しております。
総合安全工学研究所は、約50年の間に多岐に亘る安全問題に取り組んできました。
日本における労働災害統計を見ると1970(昭45)年の死亡者約6000名、負傷者数36万名が50年経過した2020(令2)年には各々800名、12万名に減少しています。この成績の一端を担えた事に感謝します。
しかしながら、まだまだ安全に対して多くの問題が存在するということを認識しなければなりませんので、今後も微力ながら努力を続けていく所存です。